本文ノート
次の場合は、踵への施術や運動より先に、医療機関での評価を優先します1,2。
- 活動量を増やしたあとや硬い路面に変えたあとに始まった痛みが、運動時から安静時にも続くようになった、踵骨を押すと一点が強く痛む、腫れや皮下出血がある(踵骨の疲労骨折。初期のX線では見えないことが多い)。
- 転落や強い外傷のあとに体重をかけられない(踵骨の骨折)。
- 急に「切れた」感じがして痛みと腫れが出た(足底腱膜の断裂。ステロイド注射のあとに報告がある10)。
- 焼けるような痛み、しびれ、感覚の低下を伴う(神経の絞扼、腰の神経根の障害)。
- 両方の踵が痛む、ほかの関節の腫れや痛みを伴う(脊椎関節炎、痛風、関節リウマチなど全身の病気)。
- 赤み・熱感・腫れ、傷や潰瘍がある、特に糖尿病などで足の感覚が落ちている(感染、骨髄炎)。糖尿病の足が、痛みは乏しいのに熱く腫れている場合は、急性のシャルコー足の可能性があり、すぐに受診する。
- 安静時や夜間の痛み、発熱、原因の分からない体重減少、腫れやしこりがある(まれに腫瘍・感染。レッドフラッグ・安全管理)。
- 子どもの踵の後ろの痛み(5〜11歳に多い踵骨骨端症:シーバー病)は、成長期の骨の問題として評価する2。
踵の痛みは外来でよく見る症状で、原因の多くは機械的なものです。足底の踵の痛みでもっとも多いのは足底腱膜の痛み(足底筋膜炎・足底腱膜症)で、内側の踵の足底側が痛み、朝の最初の数歩や長く休んだあとの歩き始めに特に強くなります2。JOSPTのガイドライン(2023年改訂)によると、足底腱膜の痛みは一般の人の足の病気のおよそ15%を占め、40〜60歳に多く、男女差はありません。ランナーや立っている時間の長い仕事の人に多く、多くは荷重の活動が変わったことをきっかけに徐々に始まります。名前に「炎」がついていますが、炎症と変性の両方の性質を含む連続した状態と考えられています1。
上の枠のサインは、プライマリケア向けの総説とガイドラインの鑑別にもとづいています。痛みの場所は鑑別の手がかりになり、足底、踵の後ろ、内側、外側で考える病気が変わります1,2。確率での考え方はレッドフラッグ・安全管理、しびれや灼けるような痛みの考え方は神経障害性疼痛で扱います。
治療の軸は、説明と負荷の管理、ストレッチ、テーピング、足部と足関節の筋力トレーニングです。ガイドラインは、徒手療法、ストレッチ、テーピング、朝の一歩目の痛みが続く人への夜間装具を強く(A)、筋力トレーニングを中等度に(B)推奨しています1。系統的レビューと専門家・患者の意見を合わせた英国の研究グループの実践ガイドも、テーピング・ストレッチ・説明を中心に置き、反応が不十分な人に体外衝撃波、さらに作製した足底板を加える段階的ケアを勧めています6。目標は痛みをすぐに消すことではなく、踵が耐えられる負荷の範囲を広げ、立つ・歩く・走る・働くといった生活でできることを増やすことに置きます。
少し掘り下げる
典型的な特徴
ガイドラインは、次の所見の組み合わせから足底腱膜の痛みを判断するよう勧めています(B)。踵の足底内側の痛みで、休んだあとの最初の数歩で目立ち、長く立ったあとにも悪化する。最近の荷重の活動の増加がきっかけになっている。足底腱膜の近位の付着部を押すと痛む。ウインドラステストが陽性。足根管のテストが陰性。足関節の自動・他動の背屈が制限されている。Foot Posture Index(FPI-6)の値が典型から外れている。運動選手でない人ではBMIが高い1。歩き続けると痛みがいったん和らぎ、長く体重をかけると戻ってくるという経過も、典型的です2。
見分けるべきほかの原因
| 踵骨の疲労骨折 | 活動量の増加や硬い路面への変化のあとに始まり、運動時の痛みから安静時の痛みへ進む。腫れや皮下出血、骨折部位の一点の圧痛。足の疲労骨折では中足骨に次いで多い。X線では初期に見えないことが多く、骨シンチグラフィーやMRIが必要になる2。診察では踵骨の体部を触って確かめる1。 |
|---|---|
| 脂肪体(ヒールパッド)の障害 | 踵の中央の深い、打ち身のような痛みで、強く押すと再現される。裸足や硬い床で悪化する。加齢による弾力の低下や体重の増加が関わり、足底腱膜の痛みと間違われやすい2。踵の足底面の触診で確かめる1。 |
| 神経の絞扼 | 焼けるような痛み、ちくちく感、しびれ。足根管症候群では、足関節の後内側から踵、足底や足趾へ広がる痛みとしびれが、立つ・歩くことで強まる。両側の場合は全身の病気を探す2。足関節を背屈・外がえしした位置でのティネル徴候、外側足底神経の第1枝(下踵骨神経、Baxter神経)の障害、腰の神経根(S1など)も考える1,2。 |
| 炎症性の病気 | 脊椎関節炎、痛風、関節リウマチなど1,2。症状が足底腱膜の痛みの典型と合わないとき、または典型に合わせた治療で変わらないときに考える(C)1。 |
| 足底線維腫 | 足底腱膜の中央の部分のしこり。腱膜の中央を触って確かめる1。 |
| 踵の後ろの痛み | アキレス腱の腱症、ハグランド変形、踵骨後部の滑液包炎。子どもでは踵骨骨端症(5〜11歳に多い。活動で強まり、アキレス腱の付着部の腫れと圧痛、他動の背屈での痛み。X線は多くが正常)2。 |
| 感染・腫瘍 | 糖尿病の足の潰瘍、骨髄炎。腫瘍(ユーイング肉腫など)はまれ2。 |
解剖アトラスの足底(足底腱膜)、足底の神経、足の骨(内側から)で、付着部・神経・踵骨の位置を確かめながら触ると、圧痛の場所を分けやすくなります。
危険因子
ガイドラインは、足関節背屈の制限、運動選手でない人の高いBMI、ランニング、衝撃を吸収しにくい条件での仕事の荷重を、危険因子として評価するよう勧めています(B)1。片側の足底腱膜炎の50名と、年齢と性別をそろえた対照100名を比べた症例対照研究では、膝を伸ばした他動の足関節背屈が0度以下の人は、10度を超える人と比べてオッズ比23.3(95%信頼区間 4.3〜124.4)、BMIが30を超える人は25以下の人と比べて5.6(1.9〜16.6)、仕事の大半を立って過ごす人は3.6(1.3〜10.1)でした。三つはそれぞれ独立した因子で、背屈の制限がもっとも重要だと考えられています3。症例対照研究は関連を示すもので因果までは分からず、信頼区間も広いため、数字の大きさより、背屈・体重・立ち仕事の三つを必ず確かめる手がかりとして使います。
経過の見通し
足底腱膜の痛みが落ち着くまでには、数か月から年の単位がかかることがあります2。超音波で確かめた174名を平均9.7年(症状の始まりから)追った研究では、追跡の時点で54%が無症状で、まだ症状がある確率は、症状の始まりから1年で80.5%、5年で50.0%、10年で45.6%でした。女性と両側の痛みで見通しがよくない一方、初めの腱膜の厚さと踵骨棘の有無は見通しに関係しませんでした5。ただしこの集団は、初診時に症状が平均304日続き、93%が超音波ガイド下のステロイド注射を受けた治りにくい人たちで、症状が残る人の痛みは0〜10の尺度で、走るときでも平均2.8(歩くとき1.8、安静時0.7)と軽いものでした5。すべての患者に当てはまる数字ではありません。指針は、見通しはよいが落ち着くまでには時間がかかることを、現実的に伝えるよう勧めています6。
さらに掘り下げる
ウインドラステストを確率で読む
母趾を背屈すると足底腱膜が中足骨頭のまわりに巻き取られて張力が増す、というウインドラス機構(足部アーチ)を使った検査です。足底腱膜炎22名、ほかの足の痛み23名、対照30名で調べた研究では、荷重位のテスト(台の端から足趾を出して母趾を背屈)で痛みが再現されたのは足底腱膜炎の31.8%、非荷重位では13.6%で、ほかの二つの群には陽性者がいませんでした4。特異度は高く、感度は低い検査です。陽性なら足底腱膜の痛みの見込みを強めますが、陰性でも否定はできません。ただし対象は合わせて75名と少なく、特異度をそのまま100%と読むことには慎重になります。ガイドラインは、荷重位と非荷重位の両方で行うよう挙げています1。
画像の位置づけ
ガイドラインは、臨床の診察で足底腱膜の痛みの基準に合う人には、保存的な治療で変わらないまでは画像検査は通常は必要ないとしています。画像を考えるときは、まず荷重位のX線、それで異常がなく足底腱膜の痛み、腱膜の断裂、足根管症候群、Baxter神経の障害が疑われるときはMRIか超音波が次の検査になります。腱膜の厚さを見るうえで超音波とMRIに差はなく、足底腱膜の痛みに伴う所見の一部は症状のない人にも見られます。超音波では、腱膜の厚さが4mmを超えることと低エコーが診断を支える所見とされています1。
構造と症状は一致しないことがあります。踵骨棘は足底腱膜の痛みのある人のおよそ半数に見られますが、たまたま見つかることが多い所見です2。先の長期の追跡では、腱膜の厚さは症状のある人でもない人でも平均6.7〜6.9mmから4.3mmへ薄くなり、無症状になった人のうち腱膜が超音波で正常に戻っていたのは24%だけでした5。所見が残っていても痛みがなくなることがあり、組織の治癒と痛みの時間のずれ(組織の治癒とリモデリング)を考える例になります。
足元の条件を変えると、荷重のかかり方が変わる
靴の中に入れるものを変えると、踵にかかる圧は変わります。踵の痛みのある65歳以上の36名が、同じ靴に4種類の中敷き(シリコンのヒールカップ、柔らかいフォームのヒールパッド、ヒールリフト、既製の足底板)を入れて歩いた研究では、4種類のうち3種類で踵の最大の足底圧が統計的に有意に下がりました。もっとも大きく下げたのは既製の足底板で、その低下の大きさは次に下げたものの5倍でした。足底板は土踏まずの輪郭に沿う形で中足部の接地面積を増やし、力を分散させており、前足部の圧を増やさなかったのも足底板だけでした8。英国の実践ガイドの専門家も、休むことが難しい場面で、足底板によって踵の下の組織への負荷を短期的に減らせると述べています6。
痛みの変化については、足底板の研究は小さな差を示しており、まとめ方によって結論が分かれます。
| Whittakerらのメタ解析(19試験、1,660名) | 7〜12週で、偽の足底板より痛みが小さく減る(標準化平均差 −0.27、95%信頼区間 −0.48〜−0.06、中等度の質の証拠)。臨床的に意味のある大きさかは不確か。0〜6週と13〜52週は、痛みも機能も変わらないという、とても質の低い証拠。作製品と既製品は、どの時点でも差がない7。 |
|---|---|
| ガイドラインがまとめたメタ解析 | 偽や平らな中敷きと比べて、1〜6週・7〜12週の痛みに有意な差はない。作製品と既製品にも差はない1。 |
| 英国の実践ガイド | 作製品は、偽の装具より短期の痛みが減る(標準化平均差 0.41、95%信頼区間 0.07〜0.74。試験によって結果は一致しない)。既製品は差がない。試験ごとに足底板がすべて違い、臨床で行う調整の過程をたどった試験はなかった6。 |
比べる相手(偽の装具か平らな中敷きか)、時期、使った足底板の違いで、結果の読み方が変わります。作製品と既製品を直接比べた二つのメタ解析では、どちらも差がありませんでした1,7。
テーピングでも痛みは変わります。ガイドラインは、硬いテープ(ローダイ・テーピング)でも伸縮するテープでも、ほかの治療と組み合わせることで1〜6週の短期の痛みと機能に有益だとして強く推奨しています(A)。報告された害は軽い皮膚のかぶれだけでした1。英国の実践ガイドの系統的レビューでは、ローダイ・テーピングと偽の超音波の組み合わせを偽の超音波だけと比べた1試験で、1週の時点の朝の一歩目の痛みに標準化平均差0.47(95%信頼区間 0.05〜0.88)の差がありました。専門家の中には、テーピングで症状が減るかを見て、靴や足底板で同じ働きを再現できるかを考える人もいます6。
セラピストが見るべきこと
| 安全 | 安静時にも続く痛みと踵骨の一点の圧痛、しびれや灼けるような痛み、両側の痛みとほかの関節の症状、赤み・熱感・潰瘍、糖尿病などによる感覚の低下、子どもの踵の後ろの痛み1,2。 |
|---|---|
| 痛みの場所と性質 | 内側の付着部か、踵の中央か、後ろか、内側の足根管か。うずく痛みか、打ち身のような深い痛みか、灼けるような痛みか2。 |
| 朝の一歩目と経過 | 最初の数歩の痛み、歩き続けたときの変化、長く立ったあとの悪化。0〜10の尺度で記録する1,2。 |
| 負荷の変化 | 最近の活動量や距離の増加、仕事の立ち時間、床の硬さ、靴の変化、体重の変化1,3。 |
| 足関節背屈 | 膝を伸ばした位置と曲げた位置での背屈、荷重位の膝を前に出すテスト(ランジ)。左右差1,3。 |
| 触診とテスト | 踵骨の内側結節、踵骨の体部、足底の脂肪体、腱膜の中央、踵の後ろ。荷重位と非荷重位のウインドラステスト、足根管のティネル徴候1,4。 |
| 筋力とバランス | 片脚のかかと上げの回数と左右差、片脚立ち、片脚スクワット、歩行1。 |
| 靴と足元 | 普段の靴、裸足で過ごす時間、中敷き。テーピングや足元の条件を変えたときの痛みと歩き方の反応6,8。 |
| 経過の指標 | FAAM、FHSQ、Foot Function Indexなどの質問票を始まりにそろえて記録する1。 |
| 考え方 | 「骨のとげが刺さっている」などの説明による不安、動くことへの恐怖(ノセボ)。 |
臨床での使い方
ガイドラインの推奨を一覧にする
| A(強い証拠) | 下肢の関節と軟部組織への徒手療法。足底腱膜に絞ったストレッチと下腿三頭筋のストレッチ(短期と長期の痛みと機能)。硬いテープ・伸縮するテープを、ほかの治療と組み合わせて(短期)。朝の一歩目の痛みが続く人への1〜3か月の夜間装具。ストレッチの効果を高める目的で超音波療法を使わない1。 |
|---|---|
| B(中等度の証拠) | 足部と足関節の筋の抵抗運動を含む運動療法。下腿と足底の筋のトリガーポイントへのドライニードリング(日本では鍼の資格の範囲で行う手技)。低出力レーザー(短期の痛み)。足底板を短期の痛みに対する単独の治療として使わない1。 |
| C(弱い証拠) | 足底板を、ほかの治療と組み合わせて使ってよい。ケトプロフェンのフォノフォレシス1。 |
| D・E | 電気療法より、徒手療法・ストレッチ・足底板を優先してよい(D)。除脂肪体重を保つ運動の方法の説明と、栄養の専門職への紹介(E:理論・基礎の証拠)1。 |
| 範囲の外 | 体外衝撃波、ステロイド注射、多血小板血漿の注射は、米国の理学療法の範囲の外として推奨の対象から外し、概要だけをまとめている1。 |
夜間装具の推奨は2014年版から変わっていませんが、2014年以降に夜間装具を調べた新しい研究はなかったと記されています1。推奨の強さは、どれだけ確かな研究に支えられているかを示すもので、効果の大きさを示すものではありません。
最初の説明と負荷の管理
英国の実践ガイドは、説明を単独で確かめた試験はないものの、ほぼすべての試験の治療に含まれ、専門家が勧め患者も評価していたことから、欠かせないものとしています。内容は四つです。荷重の管理では、長く立ち続ける時間を区切り、活動の多い人ではランニングなどの負荷を減らして、踵への圧縮の負荷を全体として減らします。痛みの説明では、痛みと組織の状態の関係をはっきりさせ、見通しはよいが落ち着くまで時間がかかることを伝え、痛みの記録(ペイン・モニタリング)を使います。ほかの長い病気や高い体重の影響にも触れます。靴は、快適で支えがあり、踵が前足部より少し高く、本人が人前で履けるものを選び、症状が落ち着くまで裸足と平らで支えのない靴を避けます6。靴の条件の考え方は靴選びの力学、活動量の調整はペーシングで扱います。
体重については、ガイドラインは除脂肪体重を保つ運動の方法を説明し、必要なら栄養の専門職へ紹介してよいとしています。推奨の根拠は理論・基礎の段階(E)です1。体重の話題は、本人を責める言い方にならないよう、負荷の管理の一部として扱います。
ストレッチ
足底腱膜に絞ったストレッチは、中足骨頭に圧をかけて前足部を伸ばしながら足趾を背屈させ、足関節は中間位か背屈位に置いて行います。下腿三頭筋のストレッチは、膝を伸ばして腓腹筋を、膝を曲げてヒラメ筋を伸ばします。荷重位でも非荷重位でも行えます1。ガイドラインは両方を強く推奨しています(A)。8件の無作為化試験を集めた系統的レビューでは、足底腱膜のストレッチが下腿三頭筋のストレッチより短期の痛みで上回るという中等度の質の証拠がありました1。英国の実践ガイドがまとめた1試験(主に急性の人が対象)では、足底腱膜のストレッチが拡散型の体外衝撃波より、短期の朝の一歩目の痛みで標準化平均差1.21(95%信頼区間 0.78〜1.63)、中期で0.64優れ、長期では差がありませんでした6。朝の一歩目の前に行うなど、生活の中で続けられる時間に組み込みます(臨床の工夫)。
筋力トレーニング
ガイドラインは、足部と足関節の筋の抵抗運動を含む運動療法を勧めています(B)。徒手療法、説明、ストレッチ、抵抗運動、神経へのアプローチを組み合わせると、6週と1年の痛み、6か月の機能がよい方向に変わるという強い証拠がある一方、筋力トレーニングだけの効果の証拠は弱く、どの種類の筋力トレーニングがよいかを決める証拠は足りないとされています1。筋力を中心にした運動とストレッチを比べた84名の試験では、6週の時点で両群とも痛みが減り、群のあいだに差はありませんでした1。
Rathleffらの試験では、超音波で確かめた足底腱膜炎の48名を、インソールと毎日の足底腱膜のストレッチの群と、インソールと1日おきの高負荷の筋力トレーニングの群に分けました。筋力トレーニングは、足趾の下に丸めたタオルを置いた片脚のかかと上げで、負荷を段階的に上げます。主な評価の3か月の時点で、Foot Function Indexは筋力の群で29点低く(95%信頼区間 6〜52)、1・6・12か月では群のあいだに差はありませんでした9。著者らは、高負荷の筋力トレーニングが痛みと機能の変化を早める可能性があるとしています9。実際には、回数・負荷・速さを一つずつ調整し、運動中の痛みが本人と決めた範囲を超えず、翌日までに元の水準に戻ることを目安に進めます(臨床の考え方)。
徒手療法、夜間装具、足底板
徒手療法は、足関節背屈などの関節の制限と柔軟性の制限に対して、関節と軟部組織に行います(A)1。単独で使うより、動きやすくなった状態をその場でストレッチや運動につなげます。夜間装具は、寝ているあいだに足関節が底屈しないように保つ既製の装具で、朝の一歩目の痛みが続く人に1〜3か月使います(A)1。足底板は、既製品でも作製品でも、ストレッチなどの治療と組み合わせて使い、試す前後で朝の一歩目の痛み、長く立ったあとの痛み、歩き方を同じ方法で比べます1,7。
体外衝撃波とステロイド注射:医師が判断する治療
英国の実践ガイドの系統的レビューでは、朝の一歩目の痛みについて、集束型の体外衝撃波では短期(オッズ比1.89、95%信頼区間 1.18〜3.04)・中期・長期に、拡散型(ラジアル)では短期(オッズ比1.66、1.00〜2.76)と長期(1.78、1.07〜2.96)に、有利な差が見られました。ただし集束型の中期・長期と拡散型の短期は証拠が限られ、拡散型の短期は信頼区間の下限が1.00です。中心となる対応で十分に変化しない人に、まず体外衝撃波を、それでも不十分なら作製した足底板を加える順番が勧められています6。
ステロイド注射のコクランの系統的レビュー(39試験、2,492名)では、偽の注射や無治療と比べて1か月未満の踵の痛みを少し減らす可能性がある(0〜100の尺度で平均差 −6.38、95%信頼区間 −11.13〜−1.64、質の低い証拠)一方、1〜6か月では差がありませんでした(質の低い証拠)。有害事象を報告した21試験では、注射を受けた699名のうち足底腱膜の断裂が2件、注射部位の感染が3件報告されており、重い有害事象はまれだったものの十分に報告されておらず、より高い危険を否定できないとされています10。どちらも医療機関で医師が判断する治療で、セラピストは、適応を考える目安となる経過と反応を記録して共有します。
見直しと紹介の目安
| いつでも | 本文ノートの枠のサインが出たら、医療機関での評価を優先する1,2。 |
|---|---|
| 4〜6週 | 説明・テーピング・ストレッチを同時に4〜6週続けても十分に変化しなければ、内容と続け方を見直し、体外衝撃波などの次の手段について医師に相談する6。 |
| 12週ごろ | それでも不十分なら、作製した足底板などの追加を考える6。 |
| 典型に合わない | 症状が典型と合わない、または典型に合わせた治療で変わらないときは、炎症性の病気、脂肪体の障害、足底線維腫などを考え、保存的な治療で変わらない段階で画像検査を検討する1。 |
患者説明への変換
踵の痛みの多くは、足の裏の厚い膜(足底腱膜)が踵の骨に付く部分が、そのときの負荷に耐えにくくなって起こると考えられています。危険な原因がないかを確かめたうえで、負荷の量を調整しながら、ストレッチや筋力の運動で、踵が耐えられる負荷を少しずつ広げていきます。
最初に、「念のため、骨や神経、ほかの病気からの痛みでないかを確かめます」と伝えます。朝の一歩目が痛む理由は、「休んでいるあいだに足首と足の裏が縮んだ位置になり、最初の一歩で急に伸ばされるため」と説明できますが、これは仕組みの説明として使う臨床の考え方です。踵骨棘を気にしている患者には、「骨のとげは、たまたま見つかることが多いもので、とげのある・なしで痛みの続き方に差は見られませんでした」と伝え、骨が刺さっているという理解を外します。
見通しは、「よくなる人が多い状態ですが、落ち着くまでに数か月かかることもあります」と時間の単位で伝え、回復の時期は約束しません。立ち仕事の人には、「立ち続ける時間を区切る、硬い床では支えのある靴を履く、家でも裸足を避ける」と具体的に伝えます。インソールやテーピングを試すときは、「足元の条件を変えると、踵にかかる圧や痛みが変わることがあります。試す前と後で、朝の一歩目と夕方の痛みを比べてみましょう」と、反応を一緒に確かめる道具として伝えます。運動では、「少し痛むことは、すぐに悪くなったという意味ではありません。翌朝の一歩目の痛みが元に戻っているかを目安にしましょう」と伝えます。
言い換え
骨のとげが刺さっているから痛い。このインソールを入れれば痛みは消えます。痛いうちは歩かないでください。足底腱膜が炎症で傷んでいます。
踵が耐えられる負荷を少しずつ広げていきましょう。足元の条件を変えて、痛みと歩きやすさの反応を一緒に確かめます。翌朝の一歩目を目安に、運動の量を調整します。
