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PAIN

痛み評価

数値評価スケール(NRS)や視覚的アナログ尺度(VAS)などの尺度の特徴、変化の読み方、生活への支障の測り方を学び、点数を生活で何が困っているかにつなげるページです。

このページで学ぶこと

  1. NRS・VAS・言語評価スケールの特徴と、使い分けの根拠を説明できる
  2. 痛みの変化を、点数の差と変化率の両方で読める
  3. 痛みの強さに加えて、生活への支障、痛みの質、情動、全体的な変化の評価を組み合わせられる

本文ノート

痛みは本人の体験であり、IASPの定義の注記は、ある体験を痛みとする本人の報告は尊重されるべきだとしています1。痛みの評価は、この報告をできるだけ正確に記録し、時間の経過で比べられる形にする作業です。同時に注記は、言葉による表現は痛みを表す行動の一つにすぎず、意思を伝えられないことは痛みがないことを意味しない、とも述べています1。

痛みの強さを測る代表的な尺度は3つです2,3。

  • 数値評価スケール(Numerical Rating Scale:以下、NRS):0(痛みなし)から10(想像できる最悪の痛み)などの数字で答えてもらいます。紙でも口頭でも、電話でも使えます。
  • 視覚的アナログ尺度(Visual Analogue Scale:以下、VAS):通常100 mmの直線の上に印を付けてもらい、左端からの距離をmmで測ります。紙と筆記具、視覚と手の動作が必要です。
  • 言語評価スケール(Verbal Rating Scale:以下、VRS):「なし・少し・中くらい・強い」などの言葉から選んでもらいます。

NRS、VRS、VASを比べた研究の系統的レビューでは、NRSは回答率が高く、反応性と使いやすさの点で多くの研究で推奨され、ほとんどの場面で痛みの強さの評価に使えると結論されています3。NRSとVASの点数はおおむね対応しますが、VASが系統的に高くなる例もありました3。高齢者や認知機能の低下がある人では、VASの方が難しいことがあります2。どの尺度を選ぶにしても、同じ人には同じ尺度と同じ聞き方を続けると、変化を追いやすくなります。

数字は痛みの全体像ではありません。10点でも一時的で安全性が高い場面があり、3点でも仕事や睡眠を大きく妨げている場面があります。英国のガイドラインは、慢性痛の評価を本人中心に行い、痛みに関わる要因と、痛みがその人の生活にどう影響しているかを明らかにするよう求めています8。「今は何点ですか」で止めず、「一番強い時は何点ですか」「楽な時は何点ですか」「その点数の時に何ができなくなりますか」「何をすると翌日に残りますか」と続けると、数字が臨床の言葉に変わります。

少し掘り下げる

変化をどう読むか

慢性痛の臨床試験のデータ(約2,700人)を使った研究では、NRSが約2点、または約30%下がった時に、患者が「とても良くなった」と評価する傾向がありました4。もとの点数が高いほど、意味のある変化に必要な点数の差は大きくなり、変化率の方が、もとの点数によらず安定した目安になりました4。

計算してみます。変化率は(前の点数−後の点数)÷前の点数×100 で求めます。8点から5点なら(8−5)÷8×100=37.5%、3点から1点なら(3−1)÷3×100=約67%です。点数の差だけで見ると前者の方が大きく見えますが、率で見ると後者の方が大きい変化です。ただし、これらの目安は臨床試験の集団から得られたもので、個人の判断にはそのまま当てはまらないこともあります。本人の生活の変化と合わせて読みます。

強さ以外に何を測るか

慢性痛の臨床試験の評価項目について専門家がまとめた推奨(IMMPACT)は、痛みの強さだけでなく、身体機能、情動の状態、本人による全体的な改善度と満足度、副作用などの症状を、中核となる評価の領域として挙げています5。もともと臨床試験のための推奨ですが、日常の臨床で何を記録するかを考える枠組みとしても使えます。

日常の臨床で使いやすい短い尺度として、PEGがあります6。直近1週間の平均の痛みの強さ(P)、痛みが生活の楽しみを妨げた程度(E)、日常の活動を妨げた程度(G)の3項目を0〜10で答えてもらい、平均を出します。プライマリケアの患者で信頼性と妥当性が確認され、変化をとらえる力もありました6。

さらに掘り下げる

痛みの質を言葉で測る

痛みの質を評価する尺度に、マギル疼痛質問票(McGill Pain Questionnaire:以下、MPQ)とその短縮版(SF-MPQ)があります2。SF-MPQは「ズキズキする」「刺すような」「焼けるような」などの感覚の言葉と、「疲れる」「恐ろしい」などの情動の言葉について、それぞれの強さを答えてもらいます2。痛みの感覚的な側面と情動的な側面を分けて記録でき、神経障害性の痛みを示唆する言葉が出てくるかの手がかりにもなります。

言葉で伝えにくい人の評価

高齢者の痛みの評価に関する専門家の合意声明は、身体診察、自己申告、観察による評価を組み合わせることを勧めています7。認知症がある人でも、簡単な尺度なら自己申告ができる場合が多く、まず自己申告を試みます。それが難しい場合は、表情、声、体の動き、対人関係の変化、日常の活動パターンの変化などを観察する評価法を使います7。普段と比べた変化が手がかりになるため、家族や介護者からの情報も役立ちます。

数字に混ざっているもの

NRSやVASの数字は、侵害受容器からの入力の強さだけを表しているわけではありません。末梢の入力、脊髄での増幅、下行性の調節、注意や情動、睡眠不足、過去の経験、これから起こることへの予測が、最後に一つの数字として出てきます。だから、同じ「NRS 7」でも、炎症が強い7、恐怖で動けない7、睡眠不足で過敏になった7では、臨床上の意味が違います。点数を聞いた後に「何をした時の7ですか」「何分続きますか」「翌日に残りますか」と続ける理由はここにあります。

セラピストが見るべきこと

点数の幅今、最悪、最良、平均を分けて聞く。期間(今、24時間、1週間)をそろえる。
変化の読み方前回との差と変化率の両方を記録する。慢性痛では約2点・約30%が一つの目安。
生活への支障歩ける距離、立てる時間、眠れる時間、仕事後の反応、楽しみの妨げ。PEGなどで強さと支障を一緒に追う。
痛みの質と情動痛みを表す言葉、不安や気分、本人が痛みを危険のサインと受け取っているか。
伝える力NRSに答えにくい人にはVRSや観察による評価を使う。答えられないことを痛みがないと解釈しない。
安全点数が低くてもレッドフラッグがあれば別に扱う。点数が高くても、安全確認と機能評価を分けて考える。

臨床での使い方

聞き方の型

強さ今、いちばん強い時、楽な時を0〜10で聞く。
場面どの動作、どの時間帯、どの靴、どの仕事で変わるか。
意味その痛みで何ができないか。何を避けているか。
変化1週間、1か月、介入の前後でどう変わったか。

記録の仕方

記録では、点数と一緒に場面を残すと後で使えます。「朝の一歩目で7点」「仕事後に5点、翌朝2点」「歩行10分で4点だが休むと戻る」のように書くと、負荷量の調整や患者説明に使いやすくなります。数字だけを並べるのではなく生活の文脈を添えることで、臨床判断に耐える記録になります。

点数の上下に振り回されない

痛みが少し上がっても、活動範囲が広がっている場合があります。逆に、痛みが下がっても、不安や回避が強く残っている場合があります。数字、生活機能、本人の安心感を並べて見ると、患者と次の一手を決めやすくなります。点数が急に大きく変わった時は、新しい外傷や全身症状がないかを確認します(レッドフラッグ)。

患者説明への変換

痛みの点数は、良い悪いを決める成績表ではありません。どの場面で上がり、どの条件で下がるかを見るための目安です。数字と一緒に、できること、避けていること、翌日の残り方を確認しましょう。

患者が点数に強くこだわる場合は、「今日は点数だけでなく、生活がどう変わったかも一緒に見ます」と伝えます。痛みが少し残っていても、安全に動ける範囲が広がることはあります。反対に、点数が下がっても不安が強ければ、説明や負荷の段階づけを見直します。

自宅での記録を頼む時は、「毎日同じ時間に、今の痛みと、その日にできたことを一行で書いてください」と具体的に伝えます。NRSやVASは、患者を評価する道具ではなく、会話を具体化する道具として使います。

用語

数値評価スケール(NRS)
0(痛みなし)から10(想像できる最悪の痛み)などの数字で痛みの強さを答えてもらう尺度。口頭でも使える。
視覚的アナログ尺度(VAS)
通常100 mmの直線の上に、痛みの強さの位置を印してもらい、端からの距離を測る尺度。
臨床的に重要な変化
患者にとって意味のある変化の目安。慢性痛のNRSでは、約2点または約30%の低下が一つの目安とされる。
痛みの生活への支障(interference)
痛みが日常の活動、仕事、睡眠、楽しみなどをどの程度妨げているか。強さとは別に評価する。
観察による痛みの評価
表情、声、体の動き、日常の活動の変化などから痛みを推定する方法。言葉で伝えにくい人に使う。

確認問題

  1. NRSが8から5に下がった人と、3から1に下がった人。どちらの変化が大きいと言えますか。

    答えを見る

    点数の差は3点と2点ですが、変化率は(8−5)÷8=約38%、(3−1)÷3=約67%です。慢性痛の研究では約2点または約30%の低下が臨床的に重要な変化の目安とされ、どちらも目安を満たします。差と率の両方で読み、本人の生活の変化と合わせて判断します。

  2. 認知症のある高齢者で、NRSにうまく答えられない場合、どう評価しますか。

    答えを見る

    まず言語評価スケール(なし・少し・中くらい・強い)など、より簡単な自己申告を試します。答えられない場合も痛みがないとは考えず、表情、声、体の動き、日常の活動や対人関係の変化などの観察による評価を組み合わせます。

  3. 痛みの点数は下がったのに、患者が「まだ何もできない」と言います。何を追加で評価しますか。

    答えを見る

    痛みの生活への支障(活動、仕事、睡眠、楽しみ)、避けている動作、不安や気分、本人が戻したい活動です。PEGのような短い尺度で強さと支障をまとめて追う方法もあります。強さだけを成果の指標にしません。

関連ページ

出典

  1. IASPInternational Association for the Study of Pain. Terminology(Pain の定義と注記)
  2. PubMedHawker GA et al. 2011. Measures of adult pain: VAS, NRS, MPQ, SF-MPQ, CPGS, SF-36 BPS, and ICOAP. Arthritis Care Res
  3. PubMedHjermstad MJ et al. 2011. Studies comparing Numerical Rating Scales, Verbal Rating Scales, and Visual Analogue Scales for assessment of pain intensity in adults: a systematic literature review. J Pain Symptom Manage
  4. PubMedFarrar JT et al. 2001. Clinical importance of changes in chronic pain intensity measured on an 11-point numerical pain rating scale. Pain
  5. PubMedDworkin RH et al. 2005. Core outcome measures for chronic pain clinical trials: IMMPACT recommendations. Pain
  6. PubMedKrebs EE et al. 2009. Development and initial validation of the PEG, a three-item scale assessing pain intensity and interference. J Gen Intern Med
  7. PubMedHadjistavropoulos T et al. 2007. An interdisciplinary expert consensus statement on assessment of pain in older persons. Clin J Pain
  8. GuidelineNICE. 2021. Chronic pain (primary and secondary) in over 16s: assessment of all chronic pain and management of chronic primary pain(NG193)
更新 2026.10.26

セラピストの方に向けた、教育用の資料です。医療判断や個別の治療の代わりではありません。強い痛みやしびれ、急な変化があるときは、医療機関へご相談ください。

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