全身的な不定愁訴がインソールで改善した例｜インソールを踏んで涙を流した人の話

「靴にインソールを入れたら肩こりが治った」などと聞くとどう考えても怪しいと思うのが普通でしょう。

今回お話しするクライアントの症例は体質や姿勢、足の形状を見たときに、足元から始まる骨格や姿勢の乱れを教科書通りに体現しているかのような人でした。数少ないインソールを初めて使用して涙を流した人で、記憶に強く残っています。

その症例をご紹介しようと思います。もし当てはまることがあって、なおかつどこで治療をしても治らず薬や鍼治療に頼っているようであれば、インソールは生活に変化をもたらすかも知れません。

「よく猫背と言われます」とその人は最初に言いました。確かに猫背なことは見て感じるものでしたし、持参したレントゲンを見てもそのことは明らかでした。猫背で、ストレートネックで、腰の反りもなくストレートでした。本来であれば背骨は側方から見た場合、S字に湾曲しているのが自然で、それのしなりや、カーブの部分によって衝撃を吸収する構造をしています。

その人の背骨は首から腰に至るまで一つのカーブで構成されているような外観をしていました。

頭痛、顎関節の痛み、首の痛み、肩こり、背部痛、腰痛、股関節痛、膝の痛み、ふくらはぎの冷えと痛み、足首の捻挫後遺症、足底筋膜炎、外反母趾etc。

痛くないところを探す方が難しいほどに症状が多く、ドクターもリリカなどの強い薬をやむなく処方していました。さらに精神的な失調も確認できていました。

ただ経験上、精神的なストレスが原因で痛みが全身に現れる場合、骨格的な異常は比較的に少ないケースがほとんどなように思います。出会ってきた中では、本当に心因性の痛みを強く訴える人は姿勢や筋肉の状態に関係なく痛みを訴えることが多いのです。

足にまず目がいくほどに扁平足が顕著で、踵の角度も大きく歪んでいることがわかっていました。その結果膝や股関節、骨盤もそれに従って歪んでいました。これは関節や筋肉による代償作用と呼ばれるもので、したの関節が歪むとそれに従って上へ上へと歪みが伝播していくのです。

「もしかしたら足元から姿勢を改善して、症状を軽減できるかも知れない」

こう感じて、すぐにインソールを作ってみることを提案しました。

その日のうちにインソールを作製して、その上に立ってもらうとその人は涙を流しました。

最初は驚きましたが、本当に体が辛くて困っている人はそうやって涙を流されることがあります。それ以降も何度か経験したことです。予想通り姿勢が改善した結果、視線が高くなり、呼吸が楽になったとのことでした。

1週間ほどの間、家の中で靴を履くように指示して日頃からできるエクササイズも指導しました。１ヶ月後には症状は10から３まで低下し、見たことのない笑顔を見せてくれました。

誰しもがこの人のように改善するわけではありません。あくまでも一例に過ぎません。

ただ重力のある世界に生きるうちは、荷重の方向をインソールによって変化させて、体調を整えることは可能です。そのことがもっとたくさんの人に伝わって、いつか常識的になることを願い、これからも発信を続けたいと思います。