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「脊柱管狭窄症」という言葉は正しいのか|呼び名を「脊柱不安定症」とすべきと主張した論文をわかりやすく解説

「それは“歳のせい”ですね。脊柱管狭窄症ですよ」

脊柱管狭窄症とは、教科書に書かれていることにもばらつきがあるものの、「加齢に伴う椎間板やその他脊柱管周辺の組織の変形が物理的に神経を侵食することで、神経症や腰痛、跛行(長距離を歩けないなど)を呈する症状を引き起こす事実を示唆するもの」というふうに考えることが一般的です。

ばらつきがあると前述した通り、脊柱管狭窄症の定義は未だ定まっておらず、臨床では跛行が呈する腰痛で60代であったりすると画像検査もせずにこの病名で呼ぶことが多いです。

今回はこの脊柱管狭窄症のついての新たな見解を論文をベースに解説していきたいと思います。英語の論文のリンクを貼っておきます。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6652259/

症状は脊柱管の狭窄ではなく不安定により発現する

この論文の中では脊柱管の中を通る神経が周辺の組織の肥厚化によって圧迫されて跛行を呈するのではなく、筋力の低下による脊柱の不安定が本来の原因であると指摘しました。

筋力による支持力が低下すると脊柱周辺組織に微細な損傷が無数に発生し、それが原因で跛行や痛みを発現させると結論づけたのです。確かに活動時に痛みや跛行が現れるという事実はこの主張にエビデンスをもたらしています。なぜなら、脊柱管周辺の組織が変形して脊柱管を狭窄させているのであれば、立っていようが寝て安静にしていようが痛みや神経症状が現れるはずです。

起立して活動しているときに症状が顕著だという事実は、活動することによって不安定な脊柱が過剰に動くことで、微小な損傷の繰り返され症状が発現するのだといえるかも知れません。

 

予防的な考え方も可能か

不安定性が原因であるなら予防的な思考をしやすくなります。脊柱起立筋に対する安定化トレーニングを日頃から行うことでこの症状を防ぐことができます。プランクや片足での立位保持など、バランス能力を高めるトレーニングによって予防できるということを、症状予備軍に伝える際も大変便利だと考えます。

脊柱不安定症の治療について

重度の症状に対しては手術が適応されます。

腰椎のサイドに支柱を立てて安定させるのですが、体を反らせたり前屈をしたりは困難となります。またいずれ解説しますがこの場合何度も頻回の手術を繰り返すことになるケースがあり、これはなんとか避けたいところです。

まとめ

予防的に筋力を維持することが最善であることがわかっただけでもこの論文の価値は高いものだと個人的には思いました。

この論文の結びにもありますが、外科では脊柱安定症の方が手術を推奨しやすいために、この名前を使うことを進めているようです。

重度でない限りは進行を止めることや予防に努めたいものですね。